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2006年2月26日 (日)

納税者は公務員の「お客様」か?(その2)

木村剛氏はどうしても公務員に感謝してほしいようである。

> 民間企業であれば、お金をいただいているお客さまに感謝するのは当たり前です。

> だって、給料の原資は、お客さまからの収入なのですから。

> そうであれば、タックスイーターである限り、タックスペイヤーである納税者に対して、常に感謝すべきです。

民間企業の論理を単純に当てはめるのはどうだろうか。前にも書いたが,税金を納めるのは社会システムにおける「手続き」である。
また,これも前に書いたが,モノやサービスの提供と対価の支払いも,本来は対等の行為である。「お客様に感謝する」のは,企業がそういう姿勢を示すことで他社との競争に勝つためである。企業の従業員は利益を最大にすることが役目であるから,そのために「お客様に感謝する」必要があろう。公務員は与えられた役目を過不足なく果たすことが役目であるから,「納税者に感謝する」必要はないと自分は考える。

> まかり間違っても、「俺たちが面倒見てやっているんだから、お前らが税金を払うのは当たり前だ」という考え方をすべきではないと思います。

「公務員が納税者に感謝する必要はない」という論理は上のような考え方とはまったく異なる。自らの役目を果たそうとする公務員が,「俺たちが面倒見てやっている」,「お前ら」などという考えを持っていると見るのは,まったく歪んだ見方だと考える。

企業にとって,自社に興味を示した者が客であり,その客に感謝することはたやすい。しかし,公務員にとって,納税者は全国民である。全国民に感謝する,そのような卑屈ともいえる姿勢をなぜ全公務員に求めるのか。公務員を単なる不満のはけ口にしようとしているとしか思えない。
課税のシステムについて,不満をぶつけるべき相手は政治である。そして政治家を選ぶのは選挙民,つまり自分自身である。
「タックスイーター」と呼ばれるべきは政治家や一部の上級公務員など,意思決定を行う者たちであり,末端公務員は単なる労働者で,「税を食っている」わけではなく,「労働の対価を受け取っている」のである。

> ご理解いただけない方は、是非、一度起業していただきたい。そうすれば、嫌でも分かりますから。

「起業」する人は一部の才能ある人たちである。そういう才能を持つ人は,その才能に誇りを持って頂きたい。間違っても,一般労働者に対して,「この苦労を理解しろ」などという野卑な台詞は発して頂きたくない。

「お客様に感謝する」という民間企業における思想が,「自分は客だから感謝されるべき」という傲慢な論理になり,さらに「税金を納めているのだから公務員から感謝されるべき」という社会全体の論理にすり替わっているのではないかと思うのだが,どうだろうか。

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コメント

いろいろ意見がありますが、やはり税金がなくなると公務員の方は食べていけなくなります。

対応が丁寧だったところで納税者の方が納得できない仕事ぶりだと不満が出ると思います。頑張っている、待遇も今の社会に見合っているなと思えば文句などは出ません。

「ありがとうございましたを言え」というのは、納得できる仕事を(と納税者が思う)を求める一環に過ぎず、今はどこもサービスが良いので役所にもレベルアップが求められるところです。それだけだと思います。別に卑屈になれとは思わず、もはやそれは世間では当然になってしまっています。医者でも弁護士でも。教師もそんな教師だとお金のある親は敬遠しますよ。

やはり暮らしやすい市区町村は、掲示板や噂でも関心のまとです。隣の市町村くらいなら、引越す人、家を買う人もいると思います。さらに税収も上がって、その市にとっても良いことずくめだと思いますよ。綺麗事を言ってもお金がない市は、広告収入だの何だのと、稼ぎに走らないといけなくなってしまいます。

もちろん、公務員だけでなく、財政の無駄は多いと思いますよ!ただ木村氏の意見は単に、そういうことだと私は思っています。

投稿: まるる | 2006年2月26日 (日) 12時05分

すみません、追伸です。もちろん、やはり感謝する気持ちは持っていていただきたいのですよ。窓口の方は、そういう意識があれば、そういう態度になるのが世間の当たり前で(もちろん、消防士などは別です。職務をきちんとやってくれることが第一です、融通をきかせてくださいね)・・多分、「こんなことも言われないとやらないなんてやっぱり情けないな、役場は」レベルの話のように思うんですよね・・・現実はそうなのではないでしょうか?

投稿: まるる | 2006年2月26日 (日) 12時20分

>>タックスイーターである限り、タックスペイヤーである納税者に対して、常に感謝すべきです。
税金を支払うのは、直接受けるサービスの対価として支払うのではなく、国民としての納税の義務から支払う、いわば社会の約束事だと思います。タックスイーターである限りという表現は、国家と一企業を混同してしまっている気がします。一企業でも支払うお客様は神様ですというわけでもないときがありますね。やっぱり人同士の付き合い。御幣がある書き方ですが、態度のいいお客様と態度の悪いお客様とでは、言い値が変わってくることなんてあると思います。もちろん、リップサービスでごまかしますが(悪徳業者って言われるかな?)。でも、無理難題を日頃から突きつけてきて支払っているだぞ!みたいな態度のお客様って切りたいというのが本音だったりします。

公務員(特に窓口)に求められているのは、お客様への感謝の心ではなく、きちっとした接客態度じゃないでしょうか。人と人との接点である以上、笑顔とか社交辞令としての感謝とかは必要だと思います。しかしながら、WontBeLongさんがおっしゃるとおり、タックスペイヤーに対して感謝すべきは違うと思います。国家と一企業を混同している木村氏の意見は根本的に考え方が間違っていると思います。そして、公務員バッシングにつながりかねない危険な意見だと思います。

投稿: レッツら | 2006年2月26日 (日) 13時06分

まるる さん,
私と他の人でかみ合わない議論をしているのをごらんになったと思いますが,かみ合わない大きな原因のひとつがこれだと思います。

> 現実はそうなのではないでしょうか?

私は「現実」に対応する方法をテーマにしているのではありません。「現実」を操作している一部の力ある人たちに,力ない私たち一般市民がどう対抗すべきかをテーマにしています。
そして,この記事で問題にしている「操作された現実」は,多くの一般市民が本来は別のところに向けるべき不満を末端公務員に向けさせられている「現実」です。
ですから,「多くの一般市民がこう考えているのが現実なのだから公務員もそれに対応するべき」という議論とはかみ合わないと思います。

それともうひとつ,

> 今はどこもサービスが良いので

私は,昨今巷でよく見かける,「心のこもっていないサービスの良さ」が好きではありません。患者の名前に「さま」を付ける病院,引きつった顔でマニュアルの台詞をまくし立てる飲食店など,形式的に客を持ち上げたり,形だけ丁寧な応対にするサービスです。
さらに,公務員でもたまに見かける昨今の「変な」サービスの良さには違和感を覚えます。
別のところでも書きましたが,私は,自動車のスピード違反でパトカーに止められて,警官の第一声が「お急ぎのところ申し訳ありませんが」だったことに驚いたことがあります。これは警官が犯罪者にかける言葉ではないでしょう。しかし,多くの一般市民が求めていることなのでしょう。
警官へのこのような態度を求める気持ち,公務員への感謝の態度を求める気持ち,見かけは違いますが,根っこの部分は共通する部分があるように感じるのですが。

投稿: WontBeLong | 2006年2月26日 (日) 22時12分

> 国家と一企業を混同してしまっている気がします。

> 公務員(特に窓口)に求められているのは、お客様への感謝の心ではなく、きちっとした接客態度じゃないでしょうか。

「きちっとした接客態度」これは心もこもっていないのにやたら相手を持ち上げるのではなく,人と人の触れ合う場においてお互いが気持ちよくなれる態度ですよね。これを身に付けるためや,業務の効率化のために民間企業を参考にするのは良いですが,市民側から公務員に対して,企業と同じように自分に感謝しろというのはおかしいですよね。

投稿: WontBeLong | 2006年2月26日 (日) 22時27分

なるほど、かみあわないのはこれですね!

>。「現実」を操作している一部の力ある人たちに,力ない私たち一般市民がどう対抗すべきかをテーマにしています。

マスコミや財閥などの大手の力が働いているという話もあります。私は証拠もないのではっきりはわかりかねます。

でも、確かに部署にもよりますが、窓口が一番市民に近いのですから、そう向けられてしまう公務員の方に問題があると思います。感謝しろ・・というのは内心にも踏み込むのでよく考えたら無理ですし、企業でも舌を心で出していることも多いでしょう。でも、態度が窓口で本当に気持ちよくないことが多いんですよね。郵便局も笑顔は多くありませんが、改善された感があります。で、本質はここではないのですね。

力ない一般市民の対抗力はまず疑うとか、考える、知る機会を持つことなどでしょうか?楽しいものも多く、ゆとりある教育を受けて・・・特定思想臭のない見張り役団体、オンブズマンなどがもう少し身近になればいいなと思います・・。とにかく言う暇がない、言っても無駄、うるさく言っている団体のうさんくささがある気がします。情報が多いと考えるのも大変ですね・・

投稿: まるる | 2006年2月27日 (月) 09時03分

私はやはりWontBeLongさんやレッツらさんのご意見に賛同します。ポイントは、

>末端公務員は単なる労働者で,「税を食っている」わけではなく,「労働の対価を受け取っている」のである。

というところでしょうか。
不親切で横柄な窓口係の公務員がいたとしたら、彼は「きちんと職務を行っていない」ゆえに責められるべきであって、「納税者に対して感謝の気持ちを持って接していない」からではないと思います。

例えば、成田空港の入国審査官は、入国する外国人(日本の納税者ではない)に対しても、公平かつ丁寧な対応を期待されているはずです。それは、彼の職務がそういう「接し方」も要件として含んでいるからです。横柄で尊大な態度をとるということは、「求められた仕事をきちんとしていない」ということであり、その点で批判されるべきでしょう。その点では、民間も公務員も同じではないでしょうか。

それにしても、公務員に対する不当な批判が特に最近際立っているようで、気になります。先日は、民主党が衆議院に依頼した調査をもとに、各紙が「天下り2万2千人、補助金5.5兆円」と報じていました。この記事は、出向者を天下りに含めていたり、補助金の中身にほとんど触れていなかったりで、かなり意図的にミスリードを誘っています。私のブログ:: 「構造改革」読み書き練習ブログ | 「天下り2万2千人、補助金5兆円」報道を読み直す ::で取り上げてみましたので、よろしければ読んでみてください。

投稿: 「構造改革」読み書き練習ブログ | 2006年2月27日 (月) 22時52分

まるる さん,
私も,一部の公務員の人の応対態度には不満を持つことは多いです。それはそれで,責められるべきことだと思います。
しかし,我々一般市民が暮らしやすい世の中になることに対する障害としては,比較的些細なことではと思います。

身の回りに,情報の量は多いですが,質は結構かたよっているように思います。多くの情報の中から取捨選択するだけでなく,隠された情報にまで思いを至らせなければならないとすると,本当に大変ですね。

投稿: WontBeLong | 2006年2月27日 (月) 23時52分

「構造改革」読み書き練習ブログ 管理者さん,
そうですね。それに,さらに言えば,「態度」の中でも表情やものの言い方だけであれば,公務員なら決定的な問題ではないとも言えます。
「なんの用だ?」,「ほれ,持ってけ。」とか言われても,迅速に的確に処理してくれれば,こちらとしては特に支障はないとも言えます。ニコニコ,丁寧にグズグズされるよりは,公務員の仕事ぶりとしては良いとも言えるでしょう。感情的に我慢できれば(笑。

ブログ,拝見します。

投稿: WontBeLong | 2006年2月28日 (火) 00時04分

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