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2006年2月18日 (土)

納税者は公務員の「お客様」か?

木村剛氏のブログに以下の内容を含む記事があった。

> 税務当局にとって納税者は、本来「お客さま」であって、納税義務の履行を検分して断罪する被疑者として扱うべき対象ではない。「お前はなぜ税金を払わないんだ」と叱責する前に、「毎回払ってくれて、本当にありがとう」という素直な感謝の気持ちを示すことがベースとなるべきだ。
> 一度、起業してみたら、その想いは痛切に分かるはず。倒産のリスクと戦いながら、ようやく黒字を達成する。そしたら、自動的に半分が税金として取られていく。そのときの経営者の気持ちに思いを馳せてみてほしい。人生を失うリスクを背負いながら、決死の思いで利益を出したら、何のリスクも背負っていない人たちがその半分をかっさらっていくのだ。

これに対し,seironken さんが賛同を表明されており,

> 税務課が「いらっしゃいませ」と言ってくれたら画期的なことかもしれない。それにしても、公務員が国民に感謝を促されるとは、情けない!?

と述べられており,さらにそれに対してtownsakae2005 さんが賛同を表明されている。

木村剛氏の記事は,全体を見ると政府の政策に対する批判であるので,「税務当局」が何を指すのか判然としない。後の内容からは「公務員」を指しているようであるが,全体の流れとしてはそうではない方が自然だと思われる。

しかし,seironken さんはこの「税務当局」の一言を捉え,公務員に対する批判と取り,賛同されているように読み取れる。おそらく,「公務員バッシング志向」がそのような見方へ導いたのではないだろうか。

政府に対してではなく,公務員に対してこのような考え方をするのは問題があろう。
納税は「手続き」であって,公務員の公務員自身の発意によるサービスの提供への対価の支払いではない。一般市民が選挙によって選んだ政治家が定めた社会システムにおける手続きの一部である。
行政システムを企業経営になぞらえるのは,効率的な運営を検討する上で有用だからであろう。そのために参考にするべきことはあると思うが,本質的には違うものである。
「ものの例え」として「例えば納税者を客と考えれば,効率向上につながることもあろう」というような話ならともかく,本心から感謝するべきというような,行政を完全に企業経営と同種のものとする考え方は行き過ぎではないか。
企業経営と同じであれば,効率の良い「客」だけを相手にした方が良いし,警察官が犯罪人に,また,消防士が火元の人に「ありがとうございました」と言うようなことになる。

今の社会に意見したい人たちや,自分より立場の弱い者を探したい人たちは,このような考え方に乗せられて公務員バッシングをしていても,世の中は良くならないと気づくべきだと思うのだが,どうだろうか。

また,完全弱肉強食になっても本当に生き残れるごく一部の人たちではなく,そのような社会になっても「生き残れる」と錯覚している一部の人たちも,弱肉強食化が進んでいくといずれ自分も淘汰あるいは支配されることに気づくべきだと思うのだが,これもどうだろうか。

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コメント

よくぞ言ってくださいました。激しく同意します。
こういうきちんとした見方をされる方に出会うと、なんとかがんばろうという気がします。

投稿: 「構造改革」読み書き練習ブログ | 2006年2月18日 (土) 02時12分

通りすがりの者です。

どういうふうにやっても待遇・給料は変わらないので、きちんと問題ない程度の仕事をこなせていれば良いのかもしれませんね。でも、そういう仕事だからこそ、特に顔の見える仕事の場合、仕事をする人の対応によって気持ちも変わりますよね。税務署と消防署はまた来訪者や仕事の目的が全く別のものですから紋切り型の比較をしてもどうしようもないように思います。

特に今、社会では良いサービスに慣れているので、各自職員・課の人が自主的に、普通業務のときは相手のことを考えた対応をしてくれると嬉しいですし、ありがとうという態度でもあれば善良な納税者も心和らぎ、良い結果になると思うばかりです。もちろん必要ない、民間と異質と言われると現状はそれまでですが。

>弱肉強食化が進んでいくといずれ自分も淘汰あるいは支配されることに気づくべき

気づいているから、多くの経営者・従業員・サラリーマン・パートなどの人が汗を流し、中には自転車操業のように月末工面しながら従業員や家族を食べさrせるため日夜頑張っているのだと思います。いちいち「気づいている」とは言わないだけではないでしょうか?生き残れると錯覚していないから、せめて生き残る可能性を作るため、日夜研鑽し、仕事しているのではないでしょうか?格差社会になって困るのは、消費が減ったとき、生き残りをかける会社や経営者なのですから。

一応、一般人には公務員の給料は民間から出ているという意識があります。公と民は違います、と言っても公が接遇が悪くても良い理由はないように思いました。
市や県等の仕事をやっていただいているのはありがたいです。でも、満足していない人が増えているというなら、それを「ねたみ・叩き」と切り捨てずに、すべては無理でも多くの市民が同じ額でも良い気持ちで納税し、満足できるような政策・対応をとるのも、何も問題はないかと思います。「公務員みんなで接客業並みの対応をしてみようよ!給料は変わらなくっても」という声が内部から上がれば嬉しいですね。すぐやる課みたいにニュースに出たのもありますね。

日田市民についても法的に問題もあり、人気取りの対応かもしれませんが、反対の声が大きかったというより、賛成の人はいちいちニュースに対して「賛成です」と投稿や電話をしませんので、賛成の心の声は大きかったのではないかと私は傍目に感じました。

投稿: まるる | 2006年2月18日 (土) 13時29分

ご無沙汰しております。
本当にいい記事を書かれていますね。

木村剛氏のブログ、読ませていただきました。彼は一体、経済学で何を学んだんだろうと心から心配するほどの自己中心的考えから物事を書いているように思います。

>中小企業の経営者なら「今年も去年と同じ利益があがるなんて誰が保証できるんだ」と怒りに打ち震えながら渋々支払っているのだ。
と、知っているなら、景気を安定化させることが大切なはず。しかし、その点では税金を支払う点に重心があり、だから「感謝せよ」となる。確かに、経済を理解していない人を乗せるには、いい表現に思います。わかってるじゃないかと。しかし、もう少し先を考えられるなら、景気の安定化こそ必要なはず。小さな政府が及ぼす悪影響を誰よりも知っているのに、書いていない。

>起業してみたら、その想いは痛切に分かるはず。倒産のリスクと戦いながら、ようやく黒字を達成する。そしたら、自動的に半分が税金として取られていく。そのときの経営者の気持ちに思いを馳せてみてほしい。人生を失うリスクを背負いながら、決死の思いで利益を出したら、何のリスクも背負っていない人たちがその半分をかっさらっていくのだ。
うそつき。自動的に半分が税金になんか取られない。法人税率は30%(所得が800万円以下なら22%)だけど、ある程度の黒字になっていないとならない。誰よりも節税の仕方も知っているだろうし。知らない人にうそをついているだけ。私は個人事業主だけど、そんなことを考えない。倒産のリスクは誰よりも背負っています(笑)。政府税調はそれを理解したから、青色申告特別控除も65万に上げた(個人のことですが)。法人ははなっから、税金が出ないように調整するはず(地代家賃や役員報酬などで調整)。それでも、払えるくらいの黒字だからたくさん支払うことになる。所得が800万円になるような会社は役員報酬でたっぷりと調整しているはず。ようやく黒字を達成したレベルで地方税を合わせても半分なんかぜんぜん行かないはず。

公務員バッシング志向を国が煽っている。そんな感じがします。ある種、中国が日本を敵対視して中国政府への不満をはぐらかしているかのよう。殺伐とした世の中がさらに加速しそうです。

投稿: レッツら | 2006年2月18日 (土) 18時33分

「構造改革」読み書き練習ブログ の管理者さん,コメントありがとうございます。

そう言っていただくと,気恥ずかしい気持ち半分,同じように考える人が少ないことが残念な気持ち半分で,やや複雑ですね。(笑

投稿: WontBeLong | 2006年2月18日 (土) 19時45分

まるる さん,コメントありがとうございます。

まるるさんのご意見,日々まじめに過ごしておられる多くの一般国民を代表していると思います。
しかしながら,私もただの一般国民ですが,僭越ながら一歩退いて世の中を眺めてみると,多くの方々の考え方には疑問を感じることが多いのです。

頂いたコメントに関連して,近いうちに記事を書きたいと思いますが,とりあえずコメントに対して私が感じたことの要点を箇条書きで書いてみます。

1.私の出した警察官や消防士の例はちょっと極端かも知れません。しかし,公務員が納税者に感謝の気持ちを持つべきという考え方に対する例として,全く的はずれだとは言えないかとは思います。

2.市民が公務員を「食わせてやっている」という考え方は,私は好きではありません。したがって,私は公務員から「ありがとうという態度」を取られたら違和感を感じます。

3.与えられた環境に対応した努力は必要だと思いますので,そのような努力をする人を批判するものではありません。ただ,「環境に対応」しているつもりが「環境の悪化に加担」することになっているように思えることが気にかかります。

4.「批判の批判」は必ずしも「擁護」ではないと思います。私は公務員批判をする人たちの批判の仕方に問題があると思っているのであって,単に公務員を擁護するものではありません。私も公務員に対する批判の気持ちは持っております。

5.日田市の件についてだけは,一歩たりとも譲れるものではありません。あんな条例案に賛成する人は,もし多数であっても私から見れば「非常識」としか言いようがありません。

箇条書きにするとちょっと冷たい感じがしますね,ご容赦下さい。

投稿: WontBeLong | 2006年2月18日 (土) 20時42分

レッツら さん,
> ご無沙汰しております。
レッツらさんの精力的なブログ更新にちょっとついて行けていません。(笑

私は経済等は「ド素人」なので,専門的な見地から貴重なご意見・情報を頂き感謝しております。勉強になりました。

木村剛氏の記事は,政策批判のはずがいつの間にか公務員批判のような書き方になっており,意図的か無意識にかはわかりませんが,そのどちらにしても公務員バッシングの風潮の強さを示すものであり,気がかりです。

投稿: WontBeLong | 2006年2月18日 (土) 20時50分

通りすがりでしたのに、申し訳ありません。ブログ・ネットはいいですね、いろいろな方の意見が聞けます。年を取りますと、つい自分の見たい意見しか聞けなくなるようで、いろいろ周るのも楽しく思っております。箇条書きは読みやすいですよ。ありがとうございます。

木村氏については、一時流行した副島隆彦という人の本では竹中氏とともに売国奴のように書かれていたような。私は経済にも疎く副島氏についてすらなんとも判断しかねますが、興味深い本でした。
でも木村氏も著名な方ですよね、影響力は大きいでしょうね。

あと、箇条書きについて
2→そうですね、感謝は押し付けるのではありませんしね。しかし、感謝の態度というよりは、市民相手の態度というものを、少し自主的に改める余地はあるかと思います。労働問題などをはらみますので、軽く申したくはないのですが、一般市民の感覚(が絶対とはいいませんが)は多分JRや郵政の民営・公社化が成功していると感じているからですね。
3の具体性がちょっと想像しかねて・・申し訳ないです。

5→これは言い方がまずかったですね。これは差別で明らかに問題です。しかし日田市の財政は存じませんが、北海道みたいに全員1割減なら喝采だったかも。だから「愚かな短絡的な市長」で終わるのもどうかなと。

論点が少しずれるのですが、私は公務員バッシングを食い止めるには、社会でのお貴族様(になったと思われている。傲慢ですが、俺たちの税金で食ってという気持ちは理屈抜きで市民の中で強化中)公務員の体制が変わることが一番効果があるように感じます。
せっかくの労組が機能しなくなったのも、市民感覚・時代情勢にあってないような感じだからかな?

市民の代弁者して申し訳ないです。でも数の論理が資本も選挙も勝たせてしまう現在、民の気持ちの流れが大事に思えてしまいまして

WontBeLong様のご意見の続きもまた楽しみにしております。公務員批判の仕方、マスコミとかでしょうか?

こんな影で着々と法改正などで外資が日本の会社を狙いやすくなっているのも感じております。目そらしなどもあるのかな?

長くすみません。私は勉強不足ですので、勉強になっています。ありがとうございます。どうぞ、ご意見はまた「近いうちの記事」で・・キリもありませんのでね。今は時間もあるので周ってまた見たいです。

投稿: まるる | 2006年2月18日 (土) 22時22分

まるる さん,
「通りすがり」とおっしゃいますが,記事本文で取り上げたブログに私もコメントしておりますので,ある意味,初対面ではないですよ。(笑

丁寧なコメントありがとうございます。

箇条書きの3についての補足だけ書いておきます。
弱肉強食ともいえる競争社会のなかで,生き残るために懸命に努力するあまり,その努力がより多く報われるための政策等を歓迎することにより,弱肉強食化が一層進むことになる,といったような意味です。

投稿: WontBeLong | 2006年2月19日 (日) 00時09分

トラックバックします。興味深い内容です。公務員批判は論点の挿げ替えです。参考にさせていただきます。今後ともよろしくお願いします。

投稿: ichiro | 2006年2月19日 (日) 16時06分

ichiro さん,コメントありがとうございます。

専門家の方に興味を持っていただいて嬉しいです。
ブログを少し拝読しましたが,非常に公平で偏りのない視点から書かれており,とても参考になります。

こちらこそよろしくお願いいたします。

投稿: WontBeLong | 2006年2月19日 (日) 17時53分

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WontBeLongさんのとこと若手経営者さんのとこでseironnkennさんの記事経由で木村剛氏の記事に対して見解の違いがあり面白く読ませてもらいました。私は徴税吏員をしておりますので、納税者と接する立場から意見を述べさせていただきます。 木村剛氏の記事の中で、 税務当局にとって納税者は、本来「お客さま」であって、納税義務の履行を検分して断罪する被疑者として扱うべき対象ではない。「お前はなぜ税金を払わないんだ」と叱責する前に、「毎回払ってくれて、本当にありがとう」という素直な感謝の気持ちを示すこ... [続きを読む]

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