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2007年7月 8日 (日)

久間発言は昭和天皇のご発言と同じ意味なのか?

防衛相を辞任した久間章生氏の,原爆投下に関する「しょうがない」発言を,昭和天皇の発言を引き合いにして「問題はない」とする論調がある。

久間氏の発言と昭和天皇の発言は,果たして同一視できるものなのであろうか。

昭和天皇は,1975年に訪米し,帰国後の記者会見に応じた。
その際に,

戦争終結に当って、原子爆弾投下の事実を、陛下はどうお受け止めになりましたのでしょうか、おうかがいいたしたいと思います。

という質問を受け,昭和天皇は,

原子爆弾が投下されたことに対しては遺憾には思ってますが、こういう戦争中であることですから、どうも、広島市民に対しては気の毒であるが、やむを得ないことと私は思ってます。

とお答えになった。(日本記者クラブの「特記すべき記者会見」より)

これが果たして昭和天皇の立場においてベストの回答であったかどうかはわからない。もっと曖昧な答えをすることもできたとは言える。

しかし,昭和天皇は,米国との戦争の当事者である。そして,自身の生命を懸けて,また,敗戦後の日本の運命を懸けて降伏の決断をされ,様々な背景や経緯はあったにしろ日本の再興を支援した米国を訪ねて,感謝の意を表明して来た直後の記者会見の場である。
しかも,完全に不意打ちである質問に,瞬時に回答することを求められたのである。

また,終戦間際,昭和天皇は決定的な混乱が起きないように降伏の意を表す機を窺っていたのではないかと思われる。原爆投下は,「降伏やむなし」とするきっかけのひとつとなったのは確かであろう。

そのような,他人には到底想像し得ないような複雑な立場で,どう答えればよいというのか。まさか米国を責めるわけにもいくまい。苦渋の選択として「やむを得ない」という言葉を選ばれたのではないだろうか。
増して,結果的に良かったというような意味は込められてはいないであろう。

昭和天皇という,この上なく複雑な立場で,不意の質問に苦しんで苦しんで絞り出した一言と,現代の防衛大臣として,北海道も占領されず戦争もあれ以上長引かず,「そういう意味では良かった」と言っているようにしか聞こえない発言とは,まったく意味が違うのではないかと思うのだが,どうだろうか。

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コメント

WontBeLong さま、お邪魔します。
同じ内容の言葉でも、天皇陛下と一閣僚とでは、意味も影響もまったく違ってくるのは論ずるまでもないことで、WontBeLong さまの仰るとおりだと思います。
社長と従業員との差よりも大きいかもしれません。
つまり、昭和天皇は、何を言われても批判の対象にはなりません。共産党を除いて、国民大半は擁護してしまうでしょう。
つまり、親の言うことは、間違っていても正しいのですネ。
しかし、兄弟の言うことは、バトルになります。
これから、選挙や平和祈念活動を控え、キューマ危機は続くでしょう。

しかし、WontBeLong さま。
それにしても、「しょうがない」という言葉を批判されてしまったら、今後私たちはどうやって暮らしていけばよいのでしょうか。
そりゃ「しょうがない」では済まされない問題が世の中にはたくさんあります。
しかし、それを根に持って暮らし続けていたら、その人の人生は残念な人生だと思います。
身内を殺されれば、誰だって悔しいですし許せません。
しかし、「起きてしまったことは、しょうがない」・・・、これも事実です。
いつまでも許せないでいたら、前に進めないこともあると思うのです。
当時アメリカは、日本と戦って、圧倒的な戦力で楽勝と思える戦いでも、予想外の苦戦に当惑していたようです。
西洋人にはない東洋人の精神力に、恐怖心まで抱いていたようです。
このまま戦争を続けていたら、アメリカ兵の犠牲も大きいものになってしまう・・・。
そんなこともあって、原爆を実地で実験したようです。
そうしたら、その威力に日本だけでなく、当のアメリカも驚いたわけです。
核は、戦争勝利の道具ではなくて、人類滅亡の道具だと・・・。
そこで、爆発の規模を小さくした戦術核が開発されたようです。
しかし、いつたん核戦争になれば、より強大なパワーを使用することは明らかです。そうなれば、戦争の勝者なんていなくなってしまいます。
ですから、どうしても、核だけは反対しなければならない・・・
その気持ちはわかります。
とにかく世界の良識は、核廃絶です。
その流れに逆らった発言は、どんな思想を持っていようが政治家は控えなければならないと思います。

ところで、久間さんが「しょうがない」発言をした場所を小生は知っています。
あそこは、自民党の強力な支持団体が運営する大学の中でした。
つまり、自民党にとってはウチワの場所。安心してホンネを語るところでした。
ところが、そこで揚げ足を取られてしまったわけです。
柳沢さんの「女性は産む機械」発言も、自民党のウチワの場所でリークされてしまいました。
柳沢さんにしても久間さんにしても、発言の全文を読めば、ヘンなことを言っているわけではないですネ。
ひとつの単語を捉えられて、そこだけを問題視されてしまっているわけです。
こうなると、家の中でも安心してホンネなんてしゃべれません。
しかし、政治家になったらそういうものなんですね。
特に、最近は内部告発のブームですから、その応酬戦が激しくなっています。
政治家は、いよいよ大変になりました。
(小生は、自民党を支持していますので、こんな苦しい文章になってしまいました・・・)

投稿: あらま | 2007年7月10日 (火) 10時08分

あらま さん,力の入ったコメントありがとうございます。

久間氏の「しょうがない」について,私は前回の記事で,

>また,「しょうがないは方言で口癖でもありポッと出た」などとも述べていたが,「しょうがない」の一言が問題だと思っているのだろうか。
>「日本が降参するだろう,ソ連の参戦を止められるというアメリカの判断だった」,「幸いに北海道は占領されずに済んだ」,「あれで戦争が終わったんだという頭の整理をしている」などという発言をしているのだから,これらをトータルで見て,「原爆投下容認」と取れるのである。「しょうがない」の一言は象徴的に扱われているに過ぎない。

と書いています。
あきらめの「しょうがない」というよりも,消去法的な肯定の意味合いの「しょうがない」と取れるところが問題なのだと思います。
また,「自民党のうちわの集まりだから言えること」ということは,「他党支持者や国民の多くを占める無党派層には言えない自民党の本心」ということであり,これはこれで問題だとも思います。

投稿: WontBeLong | 2007年7月11日 (水) 22時08分

WontBeLong さま、何を書いても言い訳になってしまうようで、なかなか援護が難しい状況です。
先日も、今回の出馬予定者の会合に行ってきましたが、出陣の挨拶にはメディアも耳を尖らせていますから、その内容が慎重であるように指示があったようです。
互いに揚げ足取りで、なにか本質から外れたような感じがします。
本音も言えないタテマエだけの選挙になりそうで、寂しい気がします。

投稿: あらま | 2007年7月11日 (水) 22時30分

あらま さん,
かなり以前にこのブログの記事『「タテマエ」は悪いことか?』
http://wont-be-long.cocolog-nifty.com/blog/2005/11/post_2cfb.html
でも書きましたが,私は,「タテマエ」は大切にするべきだと思います。
選挙のときに並べた「タテマエ」を貫いてくれる人かどうかを選挙民が判断すれば良いのではないかと思います。

投稿: WontBeLong | 2007年7月11日 (水) 22時59分

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